トランプ米大統領と習近平(シーチンピン)中国国家主席は5日、電話で通商問題などについて協議しました。日本国際問題研究所の飯嶋佑美研究員は「米中の関税交渉を進展させる効果は限定的」と語ります。
- トランプ氏の強硬姿勢、中国には「好機」 識者が期待する日本の役割
――5日の首脳電話協議をどう評価しますか。
トランプ大統領の求めに応じて実施したと公表され、関税をめぐる対立のエスカレーションについて、双方が一定のコントロールを図ろうとした結果ではないでしょうか。中国側からすると、トランプ大統領によって中国がジュネーブでの合意を破っていると発信されたことや、ヘグセス国防長官によるアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)での台湾問題への言及、中国人留学生のビザ取り消し問題、半導体をめぐる規制などに対し、異議を呈する意味合いもあったと思います。中国側の公表文をみると、特に台湾問題について釘を刺した印象です。
米国側にとっては、中国によるレアアース(希土類)の輸出規制が最たる事項だったようです。中国から譲歩を引き出すどころか、中国による対抗措置について時間を割くという展開になってしまっています。中国には弱い立場に置かれているという認識はなく、焦りを感じません。今のところ、中国が大きな譲歩案を積極的に提示する見込みはなく、次回の閣僚級協議でどこまで進展が得られるかは見通せません。
――米中は5月、スイス・ジュネーブでの協議で、お互いに掛け合っている高関税について、それぞれ115%の一時引き下げで合意しました。
5月の協議は、中国にとって満足のいくものだったようです。米国と対等に交渉し、米側の譲歩を引き出したとみているようです。
中国メディアも交渉について「大成功」という論調で報じました。中国の有識者もおおむね「事前予想より良い結果が得られた」と受け止めています。中国当局も「実質的な進展が得られた」と明言しています。中国当局も「実質的な進展が得られた」とする一方、具体的な交渉が続くという姿勢も示しました。
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――交渉自体、どのような雰囲気でしたか。
交渉前は、中国外交部が「中…